仕事から戻って大麻を買いに行くため家を出た。

プッシャーと近所で落ちあってやり取りをするだけなので早い場合は10分足らずで手に入れることが出来る。

玄関を出て扉を閉めた途端家の中に鍵を忘れたことに気がついた。

取り返しのつかないことをしてしまったと一瞬慌てた。なぜなら三人のフラットメイトのうち二人はアムステルダム(カンナビスカップ)に行っている。もう一人は帰りがいつになるかわからない。

とりあえず、その一人に帰りが何時になるかテキストを送っておいた。


プッシャーとの待ち合わせ場所へ向いながら今夜の過ごし方を考える。

するとモバイルの方にアイスランドまで来てくれとプッシャーから連絡が入る。

アイスランドに移動し彼らを待ってるとフラットメイトからテキストが入った。

帰りは12時半くらいになるとのこと。

帰る目処が経ったので一安心することが出来た。あと三時間ほど時間を潰せば家に帰ることが出来る。


後ろから声をかけられた。プッシャーがやっと現れた。プッシャーは二人組でチームを組んで仕事をしているらしい。柱の裏に移動しやりとりをする。

そのとき僕は自分の置かれてる状況を説明し、こう言った。

「今夜予定なかったら一緒に遊ばないか?」

するとこう返事が返って来た「よし、わかった。俺らがいつも一服しているとこに行こう」と。


彼らのフェイバリットプレイスまでお互いに話をしながら歩く。一人はナイキのスニーカーを履き、さらに黒のニット帽を浅めに被りヒップホップ風の格好をしていた。彼の名前はサム。もう一人はティンバランドの靴を履き黒のマウンテンパーカーにキャップを被っていた。こちらの彼の名前はモウ。二人共バングラディシュ人だ。

そうこうしてるうちに例の場所に到着した。


そこはキングエドワード公園の一角だった。普段は通り道なのだが、深夜になるとゲートが封鎖されるので誰も訪れることのない場所だ。公園に囲まれ、更にテムズ川沿いにあるので騒いだり大声を出しても誰にも悟られることはない。そこに着くやいなや茂みのあたりを漁り始めた。何が出てくるのかと思ったらアルコールが出てきた。事前に隠していたらしい彼らはムスリム教徒なので家では親の監視がありアルコールが飲めないと言っていた。

準備周到にプラスチックカップまで持っていてテネシーのコーラ割りを作ってくれた。そしてジョイントを巻く。流石プッシャー、ジョイント作りがうまい。こうして僕ら三人のセッションが始まった。


今回彼らから買った品種はブルーチーズだ。「これはいいウィードだ」とサムが言う。ジョイントが僕の手元に回ってきた。一時はどうなることかと思っていたが、予想以上に良いシチュエーションで時間を過ごすことが出来そうだ。

確かにこのネタは強力でで直ぐにTHCが効いて来た。 s t o n e d 思いがけない展開に気持ちもワクワクしている。やはり大麻は良い。


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宗教の話になったら急に彼らは熱くなった。

とくにモウの方が仕切りにアッラー、アッラーと息を荒げている。

たまにサムの方が話しに入って来たりして互いの話を聞く。

この二人付き合いが長いらしく会話のコンビネーションに絶妙なものがあった。

モウが話の大筋を説明する。そしてサムが絶妙なタイミングでモウの話のワードを補うといった形で進んでいった。


そして僕の宗教を聞いて来た。僕は仏教だと答えた。

「あんたはそれによって生活が良くなっているか?」

「良くなっている。」

僕はブッタの教えを思い出してそう答えた。

僕は信心深い仏教徒ではないがどういう教えかと聞かれれば答えられるくらいには心得ていた。


すると彼らは深く納得してくれたようだった。

イスラームの人と付き合うときは何か、宗教を、ある種信心深くないと対等に付き合うことが出来ないとHさんに聞いた。

僕はそのことをここで深く実感した。彼らの態度から『神を信じる』ということは人間が人間であることの基本だというような気持ちが伝わってきた。


その後話しはサタニズムのことにまで及びフリーメイソン、イルミナティに関するちょっとした小咄を教えてくれた。

更に彼らは自分たちはサタニズムと戦っていかなければならないと主張していた。


日本ではこういった話はいくら高学歴の人でもそう簡単に出ないと思う。

それが街のプッシャーがこの話をするのだから環境は人を変えるものだと思った。


何でもこっちに住んでいてたびたび人種差別的な不快な目に会うのだという。

ある日、街を歩いていたとき警官が寄って来て「お前らの職業は何だ」と聞かれ「なぜそんな事を聞く?」と質問したところ、こう答えたという。

「お前らのような奴らがどうしてこんな服を着ているんだ?」

先程も述べたように彼らはちょっとしたブランドもので小奇麗に身を固めていた。

それを聞いた僕は確かにそんなことあったら敵対心持つだろうなと思った。


そしてその小咄というのはこういうことだった。

「おい、カナリー・ワーフの方を見てみろ!」

二人に誘導されて川の遠くに見えるビル街を眺めた。

「真中に三本ビルがたってるだろ、その真ん中が三角形の頂点になってるのがわかるか?」

僕はハッとした。明らかに意識されて三角形が作られているのがわかる。

彼らはフリーメイソンのシンボルマークの三角形のことを言っていた。

http://www.squaremile.com/features/7570/Sects-amp-The-City.html?printable=yes

「今まで知らなかった」とつぶやくと「この辺では有名な話だぜ!」と返って来た。さらに貨幣制度の否定まで唱え始め「世の中のシステムは作られているんだ」と主張していた。


彼らは仕切りに「realizerealize」と言っていた。最後には彼らのマインドに対し共感を覚えることも出来た。

良いマインドを持ってる彼らだったので今度プッシャーから大麻を買う必要があれば彼らに連絡しようと思った。


こういった話で盛り上がったのですぐ十二時近くになった。shadwell駅まで一緒に移動し、別れた。最後には仲の良い友だちになることが出来て良かった。僕は大麻と共に感謝と充実の気持ちを家に持ち帰ることが出来た。